#135
   2011年6月

    

    #1 御挨拶
このページは女将が勝手におしゃべりしたり、
色々な方のご協力をいただいて
唐津のお土産話をお届けするページで
す。
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 唐津銀行懐旧


 
 6月です。あじさいの咲く、好きな季節です。
 以前にこのページに辰野金吾博士のことを
書いたことがあります。そこで触れましたが、辰野金吾監修、田中実設計の旧唐津銀行がこのたびリニューアルされてオープンしました。そこで今月は、館長の北島俊和さんにご登場いただいて、旧唐津銀行を紹介していただくことにしました。どうぞ皆様、お出かけ下さい。
 まず、唐津銀行について、お読みください。




旧唐津銀行本店について

大島小太郎(1859-1947)
 唐津銀行頭取の大島小太郎は唐津港開港の基礎を作り唐津銀行(創建、明治18年)を現在地に移転新築することとした。その際、唐津藩校「耐恒寮」時代の同級生、辰野金吾へ唐津銀行本店設計を依頼した。しかし、当時余にも多忙だった為、弟子の清水組(現清水建設)技師長、田中実に設計施工を任せ、辰野は監修することになった。
 建物は地下1階地状2階建ての煉瓦造洋風建築となり、建築デザインは、クィーンアン様式を日本化した「辰野式」と呼ばれるもので、外壁は赤煉瓦調のタイルと白い石で化粧をし、屋根の上に尖塔やドームを載せて、王冠のように強調した。外壁の褐色タイル(化粧材)は、明治の煉瓦から次の時代への移り変わりを感じさせるものとなった。内部には、受付カウンター前に立つ柱の上部にコリント式と言われる
田中実(1885-1949)
華やかな建築様式で装飾が施されている。石炭を燃料とした暖炉は、唐津炭田の石炭輸出港として栄えた石炭産業の隆盛を感じさせる佇まいである。
 旧唐津銀行本店は他行との合併を経て戦後は佐賀銀行唐津支店として1997年までこの建物で営業を継続していたが、老朽化が激しくなった為、大修復工事が行われ、2011年3月完成した。
工事内容は、銅板葺きの屋根を創建当時の天然スレートに葺き替え。外壁の煉瓦調タイルは、割れや劣化した部分の貼り替え。建物内部は、現状仕上。壁、天井ともに木材に塗装仕上げや漆喰塗り。復元が難しい2階天井部分の漆喰飾りは、解体せず、現存部分を活かした修復。床面や天井裏に鉄骨を入れ耐震補強。
 現在、唐津地域の近代化を示す歴史的遺産として市指定重要文化財となっているが、今後は国指定重要文化財を目指しながら、市民が活用できる施設へと整備されている。    
 赤レンガの唐津駅を推進する会作成の 『赤レンガと辰野金吾』より
*大河内註:佐賀銀行唐津支店は別の地に新築移転し、この建物は市に寄贈されております。




ごあいさつ
旧唐津銀行 館長 北島俊和






 旧唐津銀行がやっと復元工事が終わり、リニューアルオープンしました。明治45年の創建当時に甦った建物を見に来ていただきたいと思います。


 大島小太郎が若干26歳で大石町に創業したのが明治28年(1885)、それから街の移り変わりと共に明治45年(1912)に本町の現在地に新築移転、同窓生である辰野金吾が監修した唐津銀行。それから99年の歳月が流れました。来年は大きな節目となる100年を迎える建物です。


 明治以降の唐津を語る上で耐恒寮の存在は欠かせません。
現存する耐恒寮の校門
現在は唐津東高校と共に移転
明治4年(1871)に英学塾耐恒寮が出来、そこに教師として赴任したのが後の総理大臣となる高橋是清、在任は僅か1年3ケ月しか続かなかったが、彼に学んだ生徒たちは才能を開花させ期待に応え、それぞれの夢を実現する人物に成長しました。
 日本銀行本店や、東京駅など、海外を含め200を超える建物を設計した辰野金吾、三菱丸の内煉瓦街にも携わった曽禰達蔵、外にも鉱山技術者、鉱山開発の事業家、法律学者、経済学者、そして唐津の産業基盤を築き近代化に貢献した大島小太郎、また、この時代女子にも門戸を開き、多岐にわたって人材が輩出されました。

 唐津銀行は、赤レンガと花崗岩をバランスよく配し、屋上部には銅板葺きの尖塔やドーマー窓など、いわゆる「辰野式」といわれる当時の最先端のデザインを取り入れた、モダンでオシャレな建物です。現在、館内には、当時の唐津の姿、時代背景、修復時の様子など、又、辰野金吾、設計者の田中実、大島小太郎を紹介しています。

 私達街つくり団体「唐津赤レンガの会」(赤レンガの唐津駅を推進する市民の会を名称変更)は、日本近代建築の租、唐津出身の辰野金吾を顕彰し、文化的歴史的価値を踏まえた旧唐津銀行、そして赤レンガの景観を目指し、市民の誇りと将来を担う子供たちが夢を持てるような街作りに寄与することを目的に事業を行っています。


 会が発足して3年余り、この間の活動の一端を申し上げますと、
○「唐津が生んだ建築界の巨匠たち」写真展開催。東京駅の赤レンガを同時展示。
○「辰野金吾を知る旧唐津銀行ツアー」
  全国城下町シンポジウム唐津大会のイベント参加として。
○福岡市赤煉瓦文化館「誕生百年祭」協賛イベントとして「唐津が生んだ偉大な建築家・辰野金吾展」開催。同百年祭祝賀式典出席。
○赤煉瓦建物(旧サッポロビール九州工場など)歴史的建造物見学後、門司赤煉瓦プレイスで意見交換。辰野金吾生誕の地である唐津は日本における赤煉瓦建造物の出発点であり、また建築界における偉人が多く誕生した特筆すべきまちであることなどの話し合いを行った。
○福岡県在住の方を対象に建築界の巨匠生誕の地「唐津を訪ねる旅」バスツアー開催。何度も来ているが唐津の素晴らしい文化に触れたと感動された。
○「旧唐津銀行工事現場見学会」も計3回開催。
○「辰野金吾を生かした魅力あるまちづくり事業」では旧唐津銀行に関する告知及び案内掲示板製作。
○「レーザーラジアルヨット世界選手権大会in唐津」期間中にも写真展開催。
○唐津工業高校建築科の生徒を対象に唐津を知ろうミニシンポジウム「若者と考える近代化遺産建築群」を学校で開催。
○ 如何ににほんを代表する建築家であるか、百聞は一見に如かずと「辰野金吾建築を訪ねて」とのテーマで奈良ホテルに泊まり、大阪市中央公会堂、南海電鉄浜寺公園駅。更にパートⅡとして福岡市赤煉瓦文化館、西日本工業倶楽部(旧松本健次郎邸)研修旅行。さすがと思わせる建築群でした。

 今年度も8月20日(土)13:00~15:00 旧唐津銀行に於いて「絵手紙スケッチ大会」(100名まで)
8月22日(月) 辰野金吾生誕祭、及び辰野金吾に関するセミナーを予定しています。

 この建物の魅力をランドマークとして、又、唐津の新しい観光スポットとして、唐津城、旧高取邸(国指定重要文化財)、曳山展示場、そして旧唐津銀行と回遊性を持たせて、唐津をよりいっそう楽しんでいただければと思っています。
 皆様のご来館を心からお待ち申し上げます。





 では、写真をお楽しみください。撮影は同会の槌野磨さんです。(1、2枚目を除く)

唐津銀行本店時代
辰野金吾博士
赤煉瓦調のタイルと花崗岩の外壁
改修前の姿
工事中の屋根の様子
工事現場の見学会
工事現場の見学会
内部の工事中
金庫も健在
オープン式典当日(2011年3月)
修復が完成。
内部の見所。写真の右端に暖炉が並んでいるのが見えますか。
受付のカウンターと鉄格子で内部と仕切られている。
上の写真の部分を内側から見るとこんなになる。
2階への階段。靴を脱いでください。
2階応接室の美しい天井。窓と暖炉、照明器具も魅力的だ。清水組の資料に白黒の写真が現存していて、絨毯の模様などは復元された。色は推測にもとずくものだそうだ。
この隣には広い部屋があり、現在は辰野金吾、曽禰達蔵、大島小太郎等の展示説明がある。

 いかがでしたか。北島館長が待っていますので、ぜひ通りがかりにのぞいてください。
地下には、有名な料理の鉄人・吉野シェフのレストラン「唐津迎賓館」がオープンしています。駐車場もあります。時間をかけて建物のディテイルを楽しんだら、地下に降りて唐津の海山の幸を楽しんでください。私とバッタリお会いするかもしれませんね。ではまた来月。



2011年6月10日 オープン記念コンサート
mama!milk公演
梅雨の夜にアコーディオンがむせび泣きました。

すてきでしたよ。


    大島小太郎については宮島醤油のホームページに詳しい資料があります。こちらから




今月もこのページにお越しくださってありがとうございました。
また来月もお待ちしています。



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