#133
   2011年4月

    


    #1 御挨拶
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 2011年3月11日は日本にとって想像を絶する受難の日でした。犠牲になられた多くのかたのごめい福を祈りますとともに、被災なさった皆様に心からお見舞いをもうしあげます。一日も早く安心できる日が来ます事を毎日願っております。勇気を出して下さい。がんばってください。


 さて、こんな中でも気晴らしに読んでいただけたらと思って、このページをお届けします。ようやく暖かくなりそうです。皆様にも春は来てくれるはずだと信じます。








木と草がいちばんえらい
青翔高校生と行く浮岳の森―


ネズミモチの花と蜜蜂
蜂の眼は紫外線まで見ることができる。
蜂の眼から見ると、人間にはさほど魅力的でもない地味な花が
キラキラと輝いているはずだと、吉森さんはいう。

私もマーヤの眼で見てみたい!


 こんにちは。
 以前に森の哲学者・養蜂家の吉森康隆さんをこのページ#117でご紹介しました。覚えていらっしゃいますか?
この3月2日に、佐賀県立青翔高等学校の環境コースの2年生20名と一緒に浮岳の森に吉森さんをお訪ねしました。私が入っている「唐津植物友の会」という小さな会と、青翔高校環境学系主任の前田先生との共同プログラムを数年前からやっているのです。森の重要性を現地でみてもらうという学習計画です。
前日は雨でしたが、予報に反して当日は青空になりました。春まだ浅い浮岳の中腹は、それでも市内より5,6度は気温が低く、体操服の生徒達は震え上がっていましたが、みな元気で、スギ花粉が風に舞い散る中でも張り切って登山しました。
その時の写真と、印象的だった言葉などをお伝えします。
一緒にこの聖なる山に登って下さい。

大まかには大工さんが建てて、仕上げは自分でしたという吉森さんの山小屋
小屋の中には薪のストーブが赤々と燃えていて暖かい。
こんな小さなソーラーパネル一つと、次の写真の小さな風車とで自家発電し、一晩本が読める程度には電気がまかなえるそうだ。
この風車は羽の回転の径が50センチくらいかな?下から見るのでよくわからないが、大きなものではない。風見鶏くらい。
芽吹き始めたモミジ。新緑の頃はさぞ美しいでしょう。
浮岳から流れ出す小川が澄んでいる。サンショウウオもいるそうだ。葉ワサビが生えていた。
吉森さんの晴耕雨読の畑。
雨読の本は山小屋の畳敷きの部屋に積んである。友人が彫ったというフクロウは、吉森さんに似ている。
山小屋に到着した生徒たちは、まず腹ごしらえ。男子生徒は外で弁当を開く。
女子生徒と女性の先生は山小屋の中であたたまりながら。
弁当が済んだら勉強開始。吉森先生と愛犬が森を案内する。
寒いので透明のビニール袋に穴をあけて着込んだ彼。だいぶ暖かくなったよ。
浮岳の7合目ほどに登って行くとこんな標識が。
看板の内容
浮岳 林木遺伝資源保存林
保護林の概要: 当地域は福岡県との境に位置する浮岳(805m)南斜面山麓にあり、アカガシ、シデ、カエデその他の広葉樹からなる天然林である。特にアカガシについては、全体の30%を占めており、材木遺伝資源の保護、保全に努めている。標高:600m 傾斜:急 地質:花崗岩 土壌型:BD(d) 林齢:120年以上
所在地:佐賀県唐津市七山大字白木 浮岳国有林124り よ林小班
面積:23、24ha
設定年月日:昭和63年3月31日
法的制限:水源涵養保安林、 航空目標保安林、保健保安林、背振北山県立自然公園(3特)
国有林は国民みんなの森です。盗伐や盗採、盗掘は法律で禁止されています。森林を大切にしましょう。また、山火事に注意しましょう。
   佐賀森林管理署
いつの台風で折れたのだろう。大木があちこちでこんなふうに倒れている。胸が痛い。
同じく倒れた老木。二本の老木がお互いに倒れ掛かって、まるで愛し合ったロミオとジュリエットの最期のように悲劇的だ。
こんな登山道路をしばらく登る。おばあさんの私は、当然おくれを取って、みんなの写真を撮れず、かろうじて最後尾を一枚。このあと、追いつくためには必死でがんばった。誰もいなくなって、転びそうで怖かった。
やっと追い付いたら、現地の勉強があっていた。森の木々の名前や、特徴の説明。
左端は「植物友の会」の松尾さん。木に詳しくて、吉森さんの助けになる。
右端は「植物友の会」の古賀さん。小回りを利かせて吉森さんの説明に必要な実や葉を探してくれる。
これは粘菌の一種。粘菌があってこそ椎茸等も生えると説明があっていたようだが、私は聞き損ねた。
浮岳の5合目の吉森さんの持ち山に戻って森作りの話を聞く。
この木は外国の木でユリノキ。蜜蜂に花がいいだろうと植えたが、成長が早いが木に粘りがなく、ボキボキと折れるそうだ。土着のものが一番いいと吉森さんが気がつくのは、こういうものを植えて経験しその後からだったそうだ。ユリノキの後ろに見えるグリーンは自生の原種のサザンカ。
吉森さんの講義の最後を締めくくるのは次のことば。
「私は、この世の中で、木と草がいちばんエライと思います。なぜなら、木と草だけが太陽の光と炭酸ガスで命を創りだすから。」
寒いので皆小屋に入って、最後のまとめ。
森の重要性を認識し、自然のありがたさを感じた一日でした。
吉森さんに見送られて生徒たちのバスが帰っていく。この子たちの心の中に、今日はポトンと何かの木の種が落ちたと信じます。その種が芽を出したら、またこの森にいらっしゃい。
愛犬、ラブラドールのグリは皆を見送ってさびしそう。
吉森さんが20年かかって作った里山の姿。20年前の台風で杉林が倒れ、見放した山主からこの地を買って理想とする森造りを始めた。広葉樹を植え、この落ち葉が腐養土となり、有機物を生じ、川に流れて海に入りプランクトンを作ってこそ、魚や海草が生きられる。豊かな海は豊かな森から。

 静かな吉森さんの言葉は皆さんの心に響いたでしょうか。まだ凛と冷たい空気の浮岳の森から、皆様にご挨拶出来ました事を喜びに思います。どうぞお元気で。また来月お会いできますように。




今月もこのページにお越しくださってありがとうございました。
また来月もお待ちしています。



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