#213 平成29年12月

このページは女将が毎月更新して
唐津のお土産話やとりとめもない
おしゃべりをさせていただくページです。
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腕に覚えあり
~二人の大工~




   
 池田 守氏  井上 学氏

 今月御紹介するのは、二人の大工さんです。
洋々閣の古い建物をたぐいまれな腕前で修復してくださっているありがたいお二人です。
古い部分の修理は勿論、いままでにはなかったものも作り上げてもらっています。
 
   洋々閣玄関の看板を彫って貰いました。もともと電飾だったものが好ましくなかったので、ケヤキの一枚板で池田氏が彫って漆をいれたものです。文字は今井凌雪先生です。何十年も前に書いていただいて、扁額にしているものを写しました。
    フロントの裏にセルフサービスのネスプレッソを置きました。テーブルと掲示板を作ってもらいました。テーブルは左側が斜めになっています。壁がそうなってますから。だから、既製品ではダメなのです。
  フロントにはお客様がチェックインの際にハンドバッグを置いておく台が必要ですので、これも作ってもらいました。カリン系の材木です。自然な色なのに、赤く、美しいです。
  こちらは古くなって黒カビが生え、水漏れし始めたヒノキ風呂の修復です。新しいヒノキで内側からと枠を貼りました。すっかりあたらしくなって香り高く、お客様が喜ばれます。
   大風呂の女湯も数年前に改修して、少し広くなりました
   この部屋は8畳の部屋二つを一つに合わせて二間続きに改修したものです。床柱は黒壇です。一部穴が開いていたのですが埋めてもらって、よくよく見なければわかりません。
   100年経った廊下にひずみがでていたものを難工事の末に立派な画廊に改修してもらい、今「大浦魚雲龍画廊」として数点を展示しています。
  階下に足音の響く階段は、一か所は裏から防音材を入れて裏打ちし、もう一か所は裏に余裕がなかったために絨毯をしいて対処しました。
  駐車場の看板も作ってもらい、杉皮の屋根までついたりっぱなものです。
  二階に上がる手すりも既製品でなく良質の材木を手作りしたものです。やさしい手触りです。ただし、このてすりはよそのお宅です。うちのも次はこんなにしてもらおうと思ってます。
 
庭の奥の腰掛けも屋根が杉皮で、とても素敵です。













丸窓には竹で編んだ障子がかけてありますが、これも池田氏の手作りです。
   床には固い材料が必要でやむをえず外材のチークを使ったところがありますが、スキもなくピシャッと決まっています。
   .井戸のポンプの騒音が問題だったのですが、井戸の中に床を作ってポンプを中に入れ、防音材で囲ってしまってすっかり音が聞こえなくなりました。外から見るとただの井戸です。
   これはよそ様のおうちですが、洗面所の鏡まで手作りです。古代の貴重な材木でできています。1000年もの永い間土に深く埋もれていたヒノキはすっかり色がついて、なんともいわれず美しいのです。塗った色ではありません。こんどこの材が手に入ったら、作ってもらいたいと思っています。
  土壁が落ちて腰板が弱っていたところを修理してもらいました。目立つところではないのに、古い雰囲気を出すために「なぐり」を掛けてくれました。あとは自然に板に色が付くのを待ちましょう。
   .2017年8月に別館の大屋根に雷が落ちました。4つに裂けながら出火を防いでくれた鬼瓦をどこかに守り神としておきたいと思って、エアコンの室外機の上を棚にしてもらって祀りました。鬼瓦の中心部分は小さく割れていて、飾れません。大屋根の穴のあいた破風と瓦はすぐに修理されました。修理の際、足場がかけられたので、わたくしは冒険をしたくなって20メートルほど上がってみたものの足がすくみましたよ。下から主人がどなっていましたが、上の方では「どこ吹く風」がぴゅーぴゅーと吹いていました。

 大工さんの仕事では、外から見える部分よりも中の基礎的なものがとても大切ですが、このお二人のこだわりはすごいのですよ。洋々閣も、お見せできない部分に多くこの二人の腕が発揮されています。天井裏に上がってお見せしたいくらいです。古い日本家屋につきものの音の問題を解決すべく、いろいろの部屋にできる限りの工夫をして改修してもらっています。おかげでほとんど騒音の苦情が出なくなりました。主人のこの50年は、改修に次ぐ改修で、ほんとに苦労が多かったのですが、池田、井上両大工さんが携わるようになってからはみるみる奇麗に、しかも丈夫になってきました。
新しくするのでなく、古い部分になじむように改修するのは、とても面倒で大変な技術がいります。
この二人の大工さんと巡り合ったことを感謝しています。
これからもよろしくね。
年の瀬になります。皆様、どうぞよいお歳をお迎えください。来年もどうぞこのページにお越しください。

       
 

今月もこのページを訪れてくださってありがとうございました。またお会いしましょう。
                             
洋々閣 女将 大河内はるみ
 

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