#152
   2012年11月


昔の襖絵に描かれている黒獅子

このページは女将が毎月更新して唐津のおみやげ話や、
とりとめないオシャベリをお伝えします。
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黒獅子、ふたたび
―我が町の曳き山自慢・特別編―


え~っ、クロジシ~!? ほんと~?

 絶叫したのはワタクシ、唐津くんち評論家の(つもり)、大河内はるみでございます。
その昔、唐津くんちに15台の曳き山があって、今は14台。マイナス1台は幻のヤマ、紺屋町の黒獅子だった、ってことは、ちゃんと知ってるのですが、クロジシが復活したとはしらんかったなあ。それも商店街の若者たちが知恵と時間と労力を出し合って、自分たちで手作りしたなんて・・・。感激!ウルウル。 聞けば、昔の黒獅子を復元したわけではなく、黒獅子をモチーフに現代アートで作ったらしいのです。ペーパークラフトというんだそうな。ダンボールみたいな紙でこさえたヤマだそうな。
紙でもなんでも結構。作ろうという熱意と、団結力と、周りの協力と・・・。第一、他のヤマももともと和紙を何重にも張って漆を塗ったものだから、紙には違いはないものね。

 というわけで、今月、11月号は、例年通り唐津くんちシリーズの「我が町の曳き山自慢」の特別編といたしまして、この黒獅子を作った制作責任者の菊池樹(たつき)さんに原稿を頂戴しました。唐津くんちが近づく、超忙しい中を快く書いて下さいました菊池さんと、超超忙しいのに写真をたくさん集めて下さいました吉冨寛さんにお礼を申し上げます。おっと、忘れちゃいけねえや、今回の特別編を仕切って下さった黒幕の親分、江頭義輝さんにも、お礼の投げキッス!

 では、おたのしみ下さい。



黒獅子について

唐津中央商店街青年部 菊池 樹


             
 今回、中央商店街青年部でイベントの一環として製作したヤマ、「黒獅子」について苦労話等あれば書いて下さいとの事だったので製作責任者である自分が執筆する運びとなりました。

 まず始めにここで言う黒獅子は曳山行列図に描かれている実在した紺屋町の黒獅子とは全くの別物であるという事を、誤解を招かないように述べさせて頂いておきます。

 

 事の発端は、何年か前の青年部の会議での事だったかと思います。現唐津土曜夜市実行委員長さんが「青年部でヤマば作るぞ!」の言葉から始まったように思います。ヤマと言っても最初はミニチュアの予定だったような記憶があります。その当時の青年部長が、「イベントの一つで実際に昔の技法でミニチュアのヤマを作ろう!」と言った言葉を覚えてます。当初はこの意見から何年かのスパンで考えて、季節ごとの商店街のイベントの一環で子供達を交えてでのヤマ作り!というのがスタートでした。

 そこでモチーフとなるヤマが検討された結果、唐津っ子なら誰もが知ってるであろう幻のヤマ「黒獅子」に決定しました。

 まず最初に起こしたイベントは幼稚園や保育園、小学校の依頼し授業の一環として、黒獅子の絵を描いて貰い、商店街にて展示しました。評判は上々で子供達や周辺住民の方々に関心を持って頂く事が出来た事と思います。

次のステップに移行する会議の際に、ミニチュアでの製作予定であった黒獅子をもっと巨大化させようとの意見があり、時の実行委員長である吉田実さんがほぼ実寸大での製作を決定されました。

当初は出来るだけ昔の技法での製作に拘って制作方法を検討しておりましたが、現実的に時間、コスト等の問題が生じて実際の製作に着手するまでには至っていませんでした。時間がないというのは今回のプロジェクトが土曜夜市40周年の記念事業と言う事だったので7月の中旬までに完成させなければならないからです。


 そこで急遽浮上した案がペーパークラフトでの製作でした。たまたま、製作を検討していた時期に刀町さんの若者の結婚式があり、余興で製作された赤獅子がペーパークラフト製で、これまた良く出来ていたので「この製作方法なら時間内で完成する事が出来る!」と製作に踏み切る事に決定致しました。



 まず始めにペーパークラフトの元となる展開図からの製作です。これはさすがに付け焼刃では作れないので、唐津曳山ペーパークラフト委員会の中尾先生に設計を依頼する運びとなりました。一から設計するのは時間がかかるとの事で、すでに製作されていた赤獅子をベースに色や形等の変更をお願いして製作していただきました。設計図のデータが出来たぐらいの時期(今年の2月下旬頃)から週2のペースで集まり製作に取り掛かりました。




 次の工程としては紙に印刷するわけですが、ここで通常との違いは大きさです。獅子頭だけでも大きさが約2メートルもある物を普通の紙では作れないのでダンボールで製作しました。しかも普通のダンボールではなく二重構造の強度が強いタイプです。ですが、このダンボールではプリントアウト出来ない為、カッティングシートで展開図を印刷しダンボールに貼り付ける方法をとりました。カッティングシートを貼る作業では、青年部にクロス屋さんがおられるので活躍して頂きました(笑)貼る作業が終わると、今度は切り出しですが・・・これがまた巨大なのと、ダンボールの厚みが厚いもんで、切り出しが終了するまで約一ヶ月の時間を要しました。


ここまでは非常に順調だったのですが、いざ組み立てとなると問題が山積みでした。まず、強度を増す為に用いたダンボールの厚み分の組み立て時の誤差や部品の接着の難易度は苦労させられました。結局、接合部にはリベットを用いたり、ホットボンドの使用で何とかクリアしました。


獅子頭とは別働隊で同時に髪の毛、垂れ幕、ちょうちん、台車の製作もされていました。まずは髪の毛ですが、本物は麻で出来てるのですが、それは無理なので青年部におられる手芸店にて毛糸を大量に仕入れてもらい一本づつ紐に編んでいくという方法でした。根気が必要ですね(笑)


垂れ幕は行列図に描かれている模様、色を参考に青年部の呉服屋さんがミシンで縫ってから模様を描く手法で、ちょうちんは市販の白ちょうちんに字や模様を描き、油を塗って仕上げました。


問題は台車ですが、これは大工さんではないと無理なんで唐津工業高校の建築科の生徒さん達に製作を依頼しました。概ね出来た所で引き取りに行き、それからよりホンモノっぽく見えるように細部の金具等をディティールUPしました。ここでは青年部ではないですが、応援で製作に協力してくれた刀町の文具店さんが大いに活躍してくれました。彼がいなければ大きく完成度に差が出てた事と思います。


獅子頭と台車は最後の仕上げの為にある自動車工場へと運ばれ、塗装、金具の加工仕上げ、取り付け等終わらせて、残すは最終組立になりました。最終組立は唐津曳山展示場の作業場をお借りして組み上げる事になりました。言い換えればそこまで実物に近い大きさで普通の工場では高さが足りずに無理と言う事でした(笑)


ここまでくると青年部や製作に携わったメンバーのテンションもMAXで目に見えて形になっていく姿を見て、自分もそうでしたが皆も感無量だった事と思います。


そして、いざ夜市の初日!!黒獅子発表の日を迎えました。正直どういう反応が返ってくるか全然見当もついてませんでしたが、色々な方面の方々からお褒めの言葉を頂いた瞬間は嬉しかったですね。そして何より嬉しかったのは、後に行われるイベントの黒獅子巡行の曳き子を募集した所、長蛇の列が出来た事です。言い換えればそれだけ子供達に魅力を感じさせるだけのヤマが出来たって!言う事ですからね~(笑)

そもそも黒獅子を作り、どう運用していくのか?っていう根本的な意図は子供達に黒獅子というヤマが実在していたという歴史的見解を持ってもらう事と、実際に唐津神祭の曳山巡行に携われない子供達にどういう形であれ、ヤマを曳く!!という行為を疑似体験してもらえればいいなぁ~っていうのが青年部の想いですね。これからの運用として考えてるのは夜市に限らず中央商店街のイベントには出す予定です。その他にも要請があれば出動する事も視野に入れて考えています。(移動費用等かかりますので有料にはなります)


最後になりましたが、完成までの5ヶ月間!正直辛い事も多々ありましたが振り返ってみると楽しかったですね。よくこんな大きなもの作ったなぁ~って逆に感心してしまいます(笑)これからも中央商店街青年部(刀町、中町、呉服町、京町)のメンバーの商店街活動の熱い思いを皆様にお伝えする事が出来れば幸いです。















黒獅子制作フォトギャラリー




写真提供は、複数の方です。
皆様にお礼を申し上げます。
順不同ですが、お楽しみください。



































 いかがでしたか?唐津も捨てたもんじゃないなあ、と、心の中が焼き芋食べたみたいにほかほかしましたでしょ?
写真のお世話をして下さった京町商店街の山内薬局の吉冨さんは、私へのメールにこう書いておられます。「
唐津中央商店街青年部の連中、実に愉快です。私は3月頃、彼らが嘿嘿と黒獅子を作っていくイキイキとした姿を見て、唐津の商店街は大丈夫!と思いました。彼らの一人一人の顔が私には石崎嘉兵衛に見えました。」
 石崎嘉兵衛とは、200年ほど前に唐津に初めて曳き山、赤獅子を作った刀町の商人です。この秋、唐津に戻って来たのは、黒獅子だけではなく、大勢の石崎嘉兵衛だったのですね。どうぞ中央商店街の若者たちに大きな拍手をお送り下さい。

この集合写真をクリックしてみてください。

黒獅子製作者

唐津土曜夜市実行委員会

実行委員長
吉田 実
(吉田゛屋)

製作責任者
菊池 樹
(田中商事不動産)

藤野 智成
(藤野綿糸店)

北島 靖久
(翔鷹館)

池田 聡
(池田屋呉服店)

林 茂樹
(ツルヤ菓子舗)

三根慶三
(ミネ電気)

牟田 龍一
(牟田金銀細工所)

門田 豪
(モンデン時計店)


篠崎 泰介
(びんつけや茶舗)

大塚 立規
(寝装の大塚)


佐賀県立唐津工業高等学校

建築科長
岩本 憲政
(教師)

建築科
井元 優作
西川 涼太
その他建築科3年の生徒達





SPECIAL THANKS

山下 聡
(やました手芸店)

鶴田 真
(鶴田文具店)

井本 圭
(RE STORE)

唐津中央商店街
事務局
山崎 リツ子

唐津商工会議所
中島 誠

ペーパークラフト設計
中尾 雄一

お手伝い
多久島 修
熊川 嘉秀






 また、来月お目にかかりましょう。
 有難うございました。






  今月もお越しくださってありがとうございました。
  また来月もお待ちしています。
                                                MAIL to 大河内はるみ