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前川観水・『松浦潟百詠』のこと (漆芸家・前川佐一氏) |
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はや、2月。1月は大雪で、被害が続出しましたね。お見舞い申し上げます。 唐津にも珍しく12月に雪が降り、1月は断続的にびっくりするような寒い日がありました。私はこたつにもぐりこみ、鍋焼きうどんを食べて、テレビばかり見ておりました。昼間にうとうとするせいか、夜間は眼がさえて、来し方をしみじみと回顧したりしました。 それで、今月のこのページは、モードとしては過去志向です。おつきあいください。 お話したいことは、前川観水という人のことです。唐津にはこんな人がいたのだよ、という、自慢でございます。 私が観水氏に興味を持ったのは、もう40年も前、親戚のK邸で、ある屏風を見たことに始まります。 その屏風は、条幅一枚ずつ六曲になった小ぶりなものです。漢字がたくさん整然と並んでいて、なにもわからない私にさえ、えらく立派なものに見えました。とぼしい知識で拾い読みをしたら、漢詩が100並べてあって、いずれも松浦潟を詠んであるようでした。ひとつ一つを勉強してみたい、と思ったのですが、難しい!!
それから何年もたって、『末盧国』(唐津の郷土史誌)を読むようになったとき、バックナンバーに「前川観水松浦潟百詠」と題して、ところどころに出ているのに気がつきました。「すると、あの屏風は、これが完成したときにまとめて書かれた貴重なものだ、もしかして、その百詠は、出版されたのだろうか、解説つきで、出てないだろうか、読みたい」と、私の中に願いが生まれたのです。 4年ほど前、わたくしどもで110周年を祝ったときに、私はK氏にお願いして、くだんの屏風を借り受けました。広間の飾りの中心にすえました。洋々閣が最盛期だった時代の唐津の様子を詠んだ詩は、その日の飾りにもっともふさわしいと思ったからです。 その時に、謡をなさるお客様が興味を示されて、この詩を全部書き写せと言われたのですが、なかなか作業が進みません。『末盧国』から拾ってきても、順序や数がぜんぜんそろわないのです。「ああ、どこかに、これを全部まとめてある本がないかしら」と、またもや強く私は願ったのでした。 それから数ヶ月、まだ、未練がましく屏風を時々眺めていたころです。東京の前川というかたが訪ねてみえて、なんと、前川観水の孫だと名のられました。祖父・佐一の法事に帰郷した、帰ってくる前に、なんとなくインターネットで祖父の名を検索したら、漆工芸家・前川佐一は出てきた。観水では出ないだろうと思いつつためしに検索したら、洋々閣のページに「満島」の詩を引用して前川観水作と書いてあるのにヒットした、これは、祖父の詩にまちがいないが、なぜ洋々閣女将が前川観水の詩を知っていたのか、という疑問をただすために、法事の終了後に私を訪ねたということでした。 私は早速かの屏風を抱えてきて、前川様にお見せしました。とても喜んでくださって、これは母が大事に保存している祖父の資料だとおっしゃって、いくつかのものを見せてくださいました。その中にあったのです。非売品ながら、また、当時の情勢として、簡素な手刷りながら、『松浦潟百詠』が! 皆様、念じれば通じるものですね。私は唐津市図書館長におはなしして、学芸員さんが前川家に行かれて、その本のコピーをとられました。そのコピーのコピーが私の手元にあります。これで、やっと、屏風の前に座って、読み下し文を見ながら、鑑賞することが出来ます。あ〜、良かった。 では、この本のはしがきと序文をどうぞ。 その下のほうは、前川観水作『松浦潟百詠』より2編と、このたび、前川家のご好意で、画帳を撮影させていただいた、観水氏本人の画です。おかげさまでこんな貴重な資料を載せたページができました。百詠の全編を知りたい方は、唐津市近代図書館にお出向きください。 ごゆっくりどうぞ。 |
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以下に、私が作成した前川佐一・観水氏の年表を書きます。参考資料は、『末盧国』第95号〜103号(昭和63年〜平成2年)と、前川家からの聞き取りです。 まちがいがあれば、ご指摘くだされば幸いです。
いかがでしたか。漆工芸家、前川佐一の作品『朝妻船図絵盆』は、現在東京藝術大学美術館にあるそうです。もっと、どこからか発見されればいいですね。でも、作品そのものよりも、彼が教育者として指導した漆工芸伝承の弟子、孫弟子、曾孫弟子たちが、最もすばらしい前川佐一氏の作品なのでしょうね。 では、みなさま、さようなら。また、来月。春まで、お気をつけて。 前川家の皆様にお礼を申し上げます。 |
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