#57
平成16年12月



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唐津のおみやげ話をお伝えするページです。
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#1 御挨拶








冬の虹
書家 宗 巧





 極月となりました。なんとも悲しい平成16年でございましたね。台風、地震などの災害や戦争、犯罪や不景気・・・、こころ寒くなる日々でした。せいぜい少しばかりの募金をする以外何もできない自分の無力さに情けなくなって空を仰ぐと、冬空に珍しく虹がかかっていました。しかも、虹(こう)と霓(げい)、雌雄の虹がそろって出ました。希望を持てと、虹が呼びかけているのでしょうか。


洋々閣の松の庭にかかった二本の虹

 こんなとき、自分を振り返る静かな時間を持ちたいものです。
 今月は、唐津の書家、宗 巧(そうたくみ)先生をご紹介します。号は、丁望、嶋生、心千など。
 宗先生は1937年、唐津の近くの加唐島の生まれで、現在は浜玉町(1月1日から合併によって唐津市になります)にお住まいです。静謐の中で筆墨三昧、仙人のようなかたです。ちなみに「唐津の仙人」と称される中里隆先生とは同級生であり、肝胆相照らす仲でいらっしゃいます。

 宗先生に会ったひとは、一度で熱心なファンになります。穏やか、というより、静謐そのもののような目をしておられます。名声や富を追わず、ひたすら書に没頭されます。あるとき、洋々閣の客室に掛けていた先生の軸を見られたお客様が、ぜひ紹介してくれとおっしゃって、ご自宅まで行かれたことがありました。そのお客様は半年後にまた来られて、再び先生を訪問なさいました。こういうことが時たまあります。書は人柄を表すからでしょうね。
洋々閣 練成会での宗先生

 宗先生の書かれたものをしみじみと眺めていると、字から問いかけられるものを感じます。「真に生きているか?」「あなたの大切なものは何か?」「あなたは幸せか?」 「Quo vadis?」・・・・・ なんて。

 先生の主宰なさる未央会の練成会が毎年春と秋に洋々閣でありますが、皆様とてもうれしそう。 私は指をくわえて陰から見ていますけど。
宗巧、中里隆、池田明史各先生

 あるときの中里隆展で、もう一人の仙人、やはり同級生の画家・池田明史先生と3人並ばれた珍しい写真をご披露します。3人とも共通してとてもシャイ。3人並んでもらって写真を撮るのは簡単ではないんですよ。ヒゲのお爺様(失礼!)が3人、少年のように楽しそうにお話をされていました。唐津弁で。「ほんなごつや」「うんさい」「おりゃ知らんじゃったばい」・・・。


 では、少し、宗先生の作品をごらんください。洋々閣蔵のものです。写真がヘタでごめんなさい。実物の持つ品格が伝わらないうらみがあります。ぜひ、浜玉町のご自宅を訪ねて、作品をごらんになって購入してくださいませ。

             
甲骨文字 
止むこと無し
自然の営みはめぐりめぐって、やむことがない


長楽未央
楽しみは長く、未だ央ば(なかば)ならず


短歌
ものを持つ二つの手さえある時は心やしなふ為にはたらく


俳句
野仏のほほふくらむや春の風 ますじ


てつびんがひとをまってゐる




 


 昨2003年11月には東京の六本木で宗巧展がありました。私はお招きを受けましたが、上京できませんでした。そのときの目録を見ると、いくつかの短歌や俳句が書の題として選ばれ、それを読むと、おのずから書家の想いのありかがわかるのではないでしょうか。

永らふることは即ち生かさるることにて老病の苦に貧富なし 杉山太郎 歌
風の中声はりあげて南無観世音 山頭火 句
これほどの石とおもへど人の手に動かぬ重さ石はもちをり 吉田和気子 歌
わが家は菊作らねど悠然と山見る心に明日はありたし 宗巧 歌 


宗先生のアトリエ
 



災害や、犯罪で苦しみを味わっているかたがたに、宗巧先生の静かな祈りが届きますように。
どうぞ、来年がおだやかな年になりますように。
お大事に。

                                      
   平成16年末 洋々閣 女将 大河内はるみ

 
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ありがとうございました。
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洋々閣 女将
   大河内はるみ


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