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#1 御挨拶

#108
2009年3月

池の観音の手水鉢

野仏さんたち
蕨野・八幡岳・鵜殿窟


 
 先月、2月8日のことでした。朝ごはんを食べていました。早春の海の幸「カジメ」をみじんに切ったものを味噌汁にたっぷりいれて、どろどろアツアツのカジメ汁をすすり終わって、あまりのしあわせに鼻歌が出ました。
「♪春は名のみの風の寒さよ。谷の鶯 歌は思えど・・・」
アッ、ウグイス!
急に会いたくなりました。さてどこに行けば会えるのでしょう。
ウグイスは「法華経、法華経」と泣く、と教わってからの一つ覚え。ウグイスに会いたいのなら仏様のいらっしゃるところに行かなきゃ。
で、野仏さんたちに会いに出かけることにしました。幸い薄日のさす、さほど寒くない天気。
目指すは八幡岳。御一緒に山登りしましょう。六根清浄!



 
蕨野の棚田
最初に唐津市相知(おうち)に向かいます。産炭地だった面影も失せた、のんびりした田舎町を抜け、まずは蕨野(わらびの)の棚田を拝見。有名な棚田百選の人気棚田です。石組は古いほうが美しいと感じました。新しいのはまだ風景に溶け込まず、そこだけ目立つからでしょうね。少し登るときれいなため池にでました。しっかり水中に藻が生育しているらしくとても鮮やかな緑
ため池
色の水面です。魚にも環境がいいのでしょうね。エサが多いので、鳥たちが盛んに垂直降下して魚をとらえていました。写真を撮りたかったけど、のろまの私にはシャッターチャンスが難しくてダメ。

ここは八幡岳の中腹。ここから八幡岳に登りますが、六根清浄と杖をついて歩くつもりはホントはさらさら無く、花守の陽子に花を探しがてら4輪駆動の小型ジープに乗せてもらいます。ジープは急斜面の細い道を突っ走ります。おお、こわ。

「五百羅漢入口」で車を駐め、少しぐらいは歩かなくちゃバチがあたると、お尻をおしてもらってフーフー、ハーハー、ずいぶん遠い道を、やっとたどり着きました。
五百羅漢の説明
五百羅漢だと書いてあったけど、ホントは「十六羅漢」だそうです。壊れかけた看板に由来が書いてありました。ありがたや。

途中で手折ってきた藪椿一輪を羅漢さんにお供えして記念撮影。お大師様や、観音様、不動様などもあり、30体位
らかんさん
は仏様がいらっしゃいました。帰り路は反対側にでるとすぐそこに車が待っているではないですか。なんだ、間違えて遠回りしたのだね。ウグイスには会えなかった。代わりにメジロが椿の蜜を吸っているのを見ました。

せっかく中腹まで来たのだから八幡岳の頂上まで行こうというので、決心して行くことに。ぎりぎり行けるところまでジープを走らせると、頂上まで立派な道が付いていました。そこは無線基地となって、各種のアンテナが林立しています。これは工事のための道路でしょうね。私が高校生の時、クラスで遠足に八幡岳に来たのですが、体の弱かった私は登れずに皆が頂上を制覇してお弁当を食べて戻ってくるまでの3時間を、捨て猫みたいに哀れに泣きながら一人で山裾で待っていたのですよ。「ボクが連れて行ってあげる」とか、「一緒に待ってい
八幡岳頂上 764メートル
てあげるよ」とかいう男子が一人もいなかったなんてドウシタコト! 美人にはかえって声をかけにくかったのかしら。
そのウラミの八幡岳ですから、50年後に初めて頂上に立った感激もひとしお。歩いたのは展望台までの最後の20メートルですから、いばれた話ではありませんがね。

八幡岳を下って池の観音様に参り、小さな美しい御堂や手水鉢、狛犬などを眺め、次に鵜殿窟(いわや)へ回ります。ここはおよそ1200年も前に密教の修現者がいたところではないでしょうか。磨崖
木漏れ日にかすかに微笑む
未完の観音様
仏が何体か見られます。若いころ来たときには見えた線彫りの未完の仏様は、岩にひびが入り、また苔むして、ほとんど見えません。崖の下の橋がかけてあるところを恐る恐る通ると、足元が揺れておぼつかない。鉄の橋脚がすでに腐っているのかも。早い修理を行政に望みます。
ずいぶん昔に、この聖地を一人で守って供養しているおばあさんがおられましたが、とっくに亡くなられたでしょうね。それでも時々掃除に
小さな不動尊
来てお花を変えたりする人がいる感じでした。洞窟の中に、10センチくらいの小さなお不動様が立っておられて、その存在感に驚きました。
ここに着いた時には人っ子一人いなかったのに、降りる時には歴史探訪ウォーキングのグループが30人ほども登ってこられて、仏様たちもうれしかったでしょうね。
ここでもやっぱりウグイスは聞けませんでした。私の信心が足りなかったのでしょうか。
イヌフグリ

帰路は陽もさしてきて暖かくなりました。
谷の鶯は聞けなかったけど、早いイヌフグリや、満開のシキミの花も見ました。アオモジも黄緑色に萌えはじめ、五倍子(きぶし)のつぼみも房を伸ばしはじめていました。春はもうすぐ。「法華経」は言えないのでところどころそらんじている「観音経」をつぶやいて野仏さんたちの路を後にしました。

ではまた来月おあいしましょう。




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ありがとうございました。
また来月もお待ちしています。


洋々閣 女将
   大河内はるみ


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